小学5年生で習う「割合」
苦手にする子、つまづき始める子が多い単元です。
実はこのテーマは5年生だけで終わらず、その後いろいろと形を変えて算数・数学に登場し続けます。
なぜ割合が難しいのでしょうか?
小学校の教科書では
割合=比べられる量÷もとにする量
比べられる量=もとにする量×割合
もとにする量=比べられる量÷割合
なんていうふうに3公式が登場します。
「どの場面でどの公式を使えば良いのかわからない。」
「割り算かと思ったらかけ算だった」、なんて声をよく耳にします。
3公式の使い分けで悩んでいる子は間違いなく、割合の意味が理解できていません。
そもそも割合というのは、2つのものを比べて、片方がもう一方の「何倍か?」ということを示す数字です。
2つのものを比べる場面では、子どもたちはそれまで足し算や引き算で考えてきたのです。
AくんはBくんより○cm低いとか、お兄さんは妹より500円多いとかいうふうに、
2つのものを比べる場面では、もっぱらその「差」を扱ってきました。
割合というのは、そうではなく
2つのものを比べて、「何倍か?」という数字で判定する比べ方なんだよ
ということを本来はもっとじっくりやる必要があるのです。
なぜならば、何倍か?という考え方は小学2年生でかけ算を習ったときに
さらっと出てくるのですが、その段階ではまだ深く理解できていません。
割合の導入にあたって、まずは簡単な数字で
例えば12人と3人で比べてみます。
12人は3人の「4倍」
では3人は12人の何倍?
ここでさっそく「???」となる子が当然出てくるのですから。
でも、ここをしっかり理解させ、腑に落ちた状態にしてやれば
割合そのものは全く難しくないんですね。
①何倍という考え方になじんでいる
②小数倍、分数倍でも考えられる
③1より小さい数をかける場面とその意味が分かる
この3つのステップを踏まえれば、
あとは表現の仕方の問題だけになります。
小数で表すのか、分数で表すのか、歩合で表すのか、百分率で表すのか
いずれも同じことを表しているので、根っこの処理は変わりません。
ところで
小学校の教科書では
割合=比べられる量÷もとにする量
比べられる量=もとにする量×割合
もとにする量=比べられる量÷割合
なんていうふうに3公式が登場します。
実はこの3公式がますます子どもたちを混乱させます。
先ほど述べたように、割合そのものは
何のことはない、2つのものを比べて、一方が「何倍か?」という比べ方をした数字でした。
従って問題に対するときも本来は
①何と何を比べているのか?
②どちらを基準に、もう一方が何倍だといっているのか?
これさえ読み取れば大丈夫なのです。
作る式も
基準の量×何倍=比べる量
これ一本で大丈夫!!
なぜならば、子どもたちは先に
□×B=Cという計算で
□=C÷Bで求められるということは学んでいるのですから。
基準の量が分からなければ、一旦 □×何倍=比べる量 というふうに
わからない部分を□にした式をつくっておいて
□=比べる量÷何倍
で良いのです。
1つの公式で済むものを、わざわざ場面を分けて別の公式にしてしまうのは
応用力を阻害する要因になります。
あるいはせめて3つの公式を同列ではなく、
重要公式と「早ワザ」というふうに分けて教えて欲しいものです。
1つをしっかり使いこなせば3倍に活用できる。
さらに変化形まで覚えてしまえばプロセスを省略して素早く解ける。
この感覚を身に着けるのに最適なテーマがこの「割合」です。
けれど、3公式暗記スタイルの授業で
今年もまた学校現場では多くの算数・数学苦手予備軍を量産していくのです。
ちなみに割合の考え方は分数のかけ算わり算ととても相性が良いのです。
いくつに分けた、いくつ分、という発想はそもそも割合そのものでもありますから。
ところが小学5年生で割合を学ぶ際に、まだ分数のかけ算わり算を習っていなかったりします。
これも本来はちぐはぐな話で、分数のかけ算わり算が使いこなせるようにしてから割合を学んだ方が
圧倒的に理解は深まりますし、より複雑な問題を自在に解くことができるようになります。
そうして、6年生では比を学習します。
この「比」という考え方は、5年生の割合の段階で
2つのものを比べて、何倍か、とう発想を身に着けた子にとっては
「な~んだ、割合とおんなじだね」
「むしろ約分みたいなことができて割合より楽ちん」
なんてスムーズに頭に入っていきます。
けれど5年生の割合で、3公式を覚えて、どれに当てはまるかを考えて
なんてやっていた子は、まったく新しいテーマのように感じて
一からやり直さないといけなくなるのです。
5年生から6年生にかけての春休みは
そんな「隠れた危険」をあぶりだす大切な時期です。
①分数の計算をかけ算わり算まで自由自在にできる
②割合の考え方を身につけ、自信をもって式が作れる
③単位当たり量の考え方で式をつくり、答えの数字の意味が分かる
現在5年生の皆さんは
この3項目をしっかりチェックして、新学年に向けて最高のスタートをきっていきましょう。