公認インストラクターとして海外からのお客さまに英語でスノーボードを教えているということもあり、「どうすれば英語で上手に話せるようになるのか」と聞かれることがあります。
とても上手な英語を話すとは言えませんが、中学校・高校で英語が大の苦手だった私がアメリカで英語で仕事ができるようになった経験を踏まえて、少しお話したいと思います(高校時代は「学校始まって以来のひどいレベルだ」と、当時の英語の先生に呆れられたほど英語が苦手だったんです)。
まず「どのレベルで英語を話せるようになりたいか」でまったく勉強の仕方が異なると思います。
- 外国で不自由なく道を聞けたり、レストランで不自由なく注文できたりするレベル
- 英語を母国語としない海外の方々と不自由なくビジネスができるレベル
- 英語を母国語とする海外の方々と不自由なくビジネスができるレベル
ラジオなどでよく宣伝されている「聴くだけで英語がはなせるようになる」という教材があります。①のレベルであれば、この教材は実は有効です。
「ケーススタディ」と言われるもので、その状況に合わせたセリフを覚えておき、実際の状況に応じてそのセリフをしゃべる、というものです。覚えたセリフが多ければ多いほど、多くの状況に対応できます。セリフでもコミュニケーションが取れれば言葉としての役割は果たしていることから、話せるということに偽りはありません。しかしながら、あくまでも「覚えたセリフを使う」というものなので、自分自身の言いたいことを自分自身の英語として話せる、というものではありません。
今、多くの日本人に要求されているのが②のケースです。海外とビジネスをするといってもなにもアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドだけとするわけではありません。アジア、ヨーロッパなど、それ以外の国々とのビジネスのほうが圧倒的に多いのが現状です。
この場合はセリフではなく、自分自身の言葉として英語を操る必要があります。ここで必要とされるのがある程度の「文章を作る」というチカラです。
「昨日行ったレストランで食べたすき焼きがメッチャうまかった」
これは日本人なら当たり前に話すレベルの日本語です。日本語ならそんなに難しいとは思わないでしょう。しかしこのレベルの文でも「英語で話せ」となると、かなり難しいのではないでしょうか。
「I went a restaurant yesterday. I ate Sukiyaki there. It was delicious.」
だいたいこれくらいじゃないでしょうか。これをそのまま訳してみると
「私は昨日レストランに行きました。私はそこですき焼きを食べました。すき焼きはとてもおいしかったです。」
かなりブツ切りの、たどたどしい日本語であるということがわかります。②のレベルであれば、少なくても
「The sukiyaki I ate yesterday at the restaurant I went yesterday was delicious.」くらいの英語はパッと言える必要があります。残念ながら出川イングリッシュはビジネスには向きません。
ではどうして多くの日本の学生は難しい英文を読めるのに、これ程度の英語すら話せないのでしょうか。
正直なところ、私は本当に英語が苦手でした。しかしアメリカに転勤になり、アメリカ人相手に英語でビジネスをしなくてはいけない状況になった以上、会社員として「英語が苦手だから」ではまったく通用しません。給料をいただいている以上、どういう理由であれプロですので、言い訳は通用しないのです。
いろいろ試行錯誤してたどり着いたのが「話そうとするから話せない。文を作って読めばいい。」という逆転の作戦です。
「自分が話したい文をできるだけ速く頭の中で書いて、それを読めば話をしているように見える」と考えたわけです。
このために徹底して英語で文章を書く練習をしました。もちろん最初は短い文です。しかし関係代名詞をうまく使えば長い文章を書けるということに気づきました。そして少しでも長い文章を書くように毎日訓練をしました。会社には通訳がいたのですが、会社に提出する技術報告書もあえて訓練として日本語と英語の両方で書くようにしました(アメリカ人の通訳の方に英文をチェックしてもらうことはお願いしていました。いわゆるネイティブチェックと呼ばれるものです)。そこまで徹底したわけです。
これが劇的な効果を出しました。最初は話したい文章を頭で作成するのに数秒かかっていましたが、そのうち1秒もたたずに文章が頭の中で作れるようになり、1年後にはほぼ無意識で英語で話ができるようになりました。当時働いていた会社で勤務していた日本人の中で一番英語を話せるようになっていました。
これが「文章を作る」チカラです。今の学校での英語は、読む力や聞く力の習得にほとんどの時間を費やしていて、文を書く時間が圧倒的に不足しています。「文を書く」というのは「文を組み立てる」ことです。長文を読むことと同様に、これには訓練が欠かせませんが、今の学校教育ではこの訓練がほとんどされていません。したがって長い文を話すためには「文を書く」という練習をすることが必要です。
長くなりましたが②では、小学生の高学年が書く作文レベルの文章を英語で書けるようになれば大丈夫だと思います。ただしこれだけの文章を書くときはTOEICで言えば800点クラスの英語力は必要と思います。
③についてはこれはもはや専門職の分野であり、とても英語だけを生業としていない私がお話しできるものではありませんので、これについてはいずれ専門家の話をお伝えしたいと思います。
English is a language you can speak if you do the right way of practice.(英語は正しい方法で練習すれば話せる言葉です。)
将来は英語でビジネスをしてみたいと考えている方は、ぜひ長い文を書くというトレーニングをしてもらいたいと思います。きっとその夢はかなうと思います。