人の体の学習は、内部を見るのがむずかしいため、図や映像資料を見て済ませることが多いようです。
しかし、できるだけ実物を見ないと、もので考える理科にはなりません。
まず、口の中の様子を観察し、消化器官の粘膜の様子を想像しました。たくさんの血管があることに子どもたちは驚いていました。
また、食道や胃の位置は、冷茶を飲んでその道筋を感じ取りました。
さらに、スーパーで売られている「ホルモン」の脂肪をとりさって観察し、小腸の襞や血管の様子を確かめることができました。
小腸で吸収された養分が、血液の中に入り、血管を通って全身に運ばれると考えた子どもたちは、血液を送り出すポンプの必要性を感じました。その働きをする心臓を、模型を見るだけでは、「スッキリ」しないということで、本物を見ることになりました。もちろん人間ではできません。
「ホルモン」の時と同様に、スーパーで売られているニワトリの心臓と肝臓を使うことにしました。
いきなり心臓や肝臓を見せると抵抗感があります。そこで次の段階を踏んで、解剖観察へと導きました。
1 心臓、肝臓、ゴボウのおいしい煮物を食べて、食感の違いから心臓の筋肉の強さを感じ取る。
2 スーパーのパックを取り出し、日常的に食品として扱われていることを再認識し、生のレバーや心臓への抵抗感を和らげる。
3 ゴム手袋をつけ、手の感覚で筋肉など組織の違いが分かるようにする。
4 後始末が楽なように、新聞紙の上で解剖する。
始めは「グロい」と言っていた子どもたちでしたが、煮物は「おいしい!」「心臓は歯ごたえがある」「筋肉だ」と言い、解剖では大動脈を見つけたり、弁がとても薄いことや下のほうの筋肉が厚くなっていることなど、たくさんのことに気づきました。そしてそれが全て全身に血液を送るために必要なことだと理解することができたのです。