突然ですが、子どもに「どうして僕は(私は)働かないといけないの?」と聞かれたら、答えられますか?
自分の信念をはっきりと答えられる!というかたもいるとはお思いますが、なかなかの難問ではないでしょうか。
今回ご紹介する本『僕たちはなぜ働くのか』(池上彰監修)には、ひとことでは説明が難しい「働く」ということについて、多角的・詳細に解説されています。
子どもの将来を話し合うためにぜひ親子で読んでおきたいこの本のあらすじと、親の時代にはなかった働くことに関する新しい流れをピックアップして紹介します!
『僕たちはなぜ働くのか』は、物語をベースに書かれています。
主人子のハヤトは中学受験に合格したものの、周りの生徒の学力に圧倒され、やがて不登校になってしまいます。
不登校になったハヤトは母親の実家がある広島へと移り住み、現地の学校に行きつつ「働くとは何か」「お金とは何か」「なぜ勉強しなくてはいけないのか」を学び考え、次第に成長していきます。
「好きなことを仕事にすべきか」
「好きなことを仕事にできなかったらどうしたらいいのか」
「好きなことを仕事にしていない人はダメなのか」
「お金のために働くのはいけないのか」
など、働くことにまつわる疑問に細かく、またどんな選択にも肯定的に答えられているところが『僕たちはなぜ働くのか』の特徴です。
自分の進路について悩んでいる小学校高学年~高校生にとって、働くことに関する知識を総合的に取り入れられる学びの多い本といえます。
各章の導入部は漫画になっているので、本を読む習慣のない子にも読みやすくなっていますよ。
『僕たちはなぜ働くのか』には、親世代が心配しなくても良かった、働くことに関する新しい社会の風潮が紹介されています。
2017年、小学生の将来なりたい職業ランキングの上位にYouTuber(動画投稿者)が入ったという話を耳にした方もいると思います。
まさにYouTuberはここ最近できた職業ですね。
YouTuberを代表するように、私たち親世代にはなかった新しい仕事が次々にできています。
一方AI(人工知能)の出現により、なくなる仕事もまた多いと言われています。
以下はAIが人に変わって行なうため、なくなってしまうと予想されている仕事です。
・電車運転士
・経理事務
・検針係
・一般事務
・バス運転手
・レジ係
男の子の憧れの職業だった電車・バスの運転士や、女性に人気の一般事務の仕事もいずれなくなってしまうそうですよ。
これからは指示通り正確にこなす仕事はなくなり、困りごとを見つけ出して解決したり、答えのない問題を仲間と一緒に解決したり、新しい問いを自ら立てて解決する創造的な力が求められます。
SDGs(エスディジーズ)とは日本語で「持続可能な開発目標」と説明されます。
その中身は17の目標に分けられていて、一例をあげると「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」「つくる責任つかう責任」などがあります。
これまで多くの会社は自分の会社やお客さんに対して、利益を与えることを目指してきました。
しかしこれからは、「企業は世の中をより良くするための責任をもたなくてはいけない」という社会の見方ができつつあります。
道徳的に正しいことや、人や環境への思いやりを持つ会社が評価され、不当に搾取するような会社は批判の対象になります。
「日本で生まれたら日本で働く」と考えがちですが、インターネットの発達により海外に住む日本人の数がこの30年で2~3倍になっています。
また日本で働く外国人の数も過去最多の282万人を超えました。
文化や考え方の異なる人達とともに生きる社会は「多様性社会」と呼ばれ、お互いの文化や考え方を理解しようと努力し、お互いを尊重することが大切になります。
多様性社会は日本人・外国人にとどまらず、年代や性別、障害の有無や、子育て中か・介護中かなども含まれます。
その人の個性や状況に合わせて、終身雇用、定時出社などにとらわれず、誰もが自分の能力を生かして柔軟に働ける社会が訪れようとしています。
『僕たちはなぜ働くのか』の中では、数多くの働く理由が紹介されています。
中でも一番はじめに書かれているのが、「(私たちが働くのは)助け合いでつくられるこの社会の一員となるため」という言葉です。
私たちは様々な人が担ってくれる仕事に助けられて生きています。
社会の一員として、誰かに助けられるだけでなく、他の人を助けて役に立つことが働く理由です、と説明されています。
「社会に貢献するために働く」という言葉を聞くと、堅苦しく感じてしまうかもしれませんが、裏返せば「好きなことを必ずみつけて、それを仕事にしなくてはいけない」「一度決めた仕事はずっとやり続けなくてはいけない」というプレッシャーから解放してくれる言葉でもあります。
冒頭にも書きましたが、「働く」という質問に答えることは本当に難しいことだと思います。
ぜひ、お子さんが進路について考え始めたら、この本をプレゼントしてあげて下さい。
そして家族で、仕事について、働くことについて、そして将来について幅広く話すきっかけにしてみて下さいね。
ーーーーーこの記事を書いたのはーーーーー
稲泉 景子 (いないずみ けいこ)
富山で6歳男児子育て中の主婦。
これから子どもにどんな教育をしていけばいいのかお悩み中。
子育て本や教育本を読むのが好き。趣味はカフェ巡りとラクガキ。
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【参考文献】
池上彰(監修), 『なぜ僕らは働くのか』, 株式会社学研プラス, 東京, 2020年。