いよいよ小学校でも来年度から英語が正式な教科となり、英語への関心が集まってきています。
たしかに「今後の国際的に開かれた社会に向けて英語を習わせたい」とお考えの保護者の方は多いと思います。
しかし、過去にアメリカでアメリカ人と一緒に仕事をしてきた経験者として、本当に国際化のことを考えるのであれば、英語よりも身につけておかなければいけない大事なものがあると感じています。
それは
- 正しい日本語を使えること
- 日本人特有の考え方を理解すること
- 物事を論理的に考えられること
この3点です。
英語だけを勉強してもこれらはまず間違いなく身に付きません。英語は基本的に「お互いの意思疎通の伝達手段」として使われるものです。
自分の考えを母国語である日本語ですら正しく表現できない人が、英語で自分の考えを正しく伝えられるわけがありません。
外国人の行動を「違う文化だから」で片づけてしまっている人で、日本の文化や日本人の考え方を正しく理解している人を見たことがありません。
論理的に話し合い、論理的に事を進める傾向が強い外国人に、感覚で説明しても理解してもらえるはずがありません。
本当に国際化に向かって子供たちの教育を考えるのであれば、英語より国語・社会・数学を身に着けるべきです。英語はそのあとで構いません。
国語は自分の考えを正しく表現するうえで絶対に重要です。
社会は地理・歴史を通して日本の文化や日本人の考え方、他の国の文化を理解するうえで絶対に重要です(文化の違いは宗教だろ、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、それぞれの宗教・文化は気候を含めた地理的要因に大きく影響されていることは言うまでもありません)。
数学は論理的に物事を考える訓練の手段としてうってつけです(実際に早稲田大学の政経学科では志願者の論理的思考力を試すために入試で数学を課しています)。
では英語は、といえば、さきほど書いたようにお互いに意思疎通を図るための伝達手段ですので、これはこれで必要なのですが、ご存知の通りAI(人工知能)が急速に進化して自動翻訳の精度も急速に高まることが分かっており、ほとんどの場合で自動翻訳でことが足りるようになるのは間違いないですから、英語力そのものの重要性は今に比べて圧倒的に下がってくることになります。
国語・社会・数学はAIで補うことは今現在の技術では極めて難しいと思いますし、AIの特性を考えると今後も難しいと思います。
そう考えると優先順位として、先ず国語・社会・数学をしっかりと身に着けるべきでしょう。
AIに任せられるものはある程度任せて、それによって得られる時間的余裕を国語・社会・数学に割り当てるということのほうが国際化に向けてはよほど合理的、と考えるのは、駐在員としての海外での勤務経験がある程度影響しているのかもしれません。