この前、国際関係の学科に進みたい生徒から、どんな勉強をすればいいか相談があったんですね。
もともと国際関係の学科に興味があったらしく、私がアメリカで駐在していた時のことや、白馬のスキー場で外国人に英語でスノボのレッスンをしているという話にも興味があったようです。
「英語は必要だけど、それ以上に勉強しなければいけないものがあるよ」と言うと、不思議そうな顔をしました。
それはそうですよね。「国際化に向けて必要だから」という理由で英語を勉強することを信じ切っていたのですから。
確かに外国の方々とコミュニケーションを図る上で英語は必要ですよ。だけど実際にアメリカでアメリカ人と仕事をした経験からしたら「英語はしょせん道具」なんですね。料理でいったら包丁とか鍋とか、そういうものですよ。最近だとバルミューダのトースターですかね。
堺とかゾーリンゲンの素晴らしい包丁を使って、状態の悪い魚の刺身を作っても、美味しくないものは美味しくないですよね。それよりも1000円くらいの包丁でいいから、状態の良いちゃんとした魚で作った刺身のほうがよっぽど美味しいでしょ?スーパーの98円の食パンをバルミューダで焼いても高級食パン専門店の食パンにはならないんですよ。
要は「コミュニケーションの中身」なんですよ。
実際に海外でアメリカ人と仕事をしていて、「なんでこいつらこんなこと聞いてくるんだ?」ということはしょっちゅうでしたよ。正直「バカじゃねえか?」と思ったことも何回もあります。
だけどよくよく考えてみると、ウチら日本人の質問も、彼女らや彼らにしてみたら同じなんじゃねえの?と思うようになったんです。
お互いがお互いの持つ価値観で、違う価値観の人のことを見ている、ということです。「それじゃあ相手を理解できねえじゃん」とその時に気づいたんです。
それからですよ。日本人ってどうしてこのように考えるのか、それは何に基づくものなのか、ってことを考えるようになったのは。
ああ、もっと日本のこと勉強しとけばよかったなあ、って本気で思いましたね。
日本のことを知るには、やっぱり社会なんですよ。日本史だけじゃダメですね。地理も必要になってきます。島国だからじゃダメなんですよ。文化が育つ地理的要因っていうもの知っておく必要がありますね。学校ではあまり触れたがらない宗教も大事ですよ。だって文化ってほとんどが宗教の上に成り立っているでしょ?
こうやって日本のことを理解するから、日本人の一般的な考え方もなんとなく分かってきます。「日本人は○○だから、こう考えるんだ」って相手に言うことができるんです。
次に日本語ですね。満足な日本語も使えないような人が、ましてや異なる文法の英語を使えるわけないですよね。これは通訳か翻訳をすると一発で分かるんですよ。
だって訳せないんです(笑)。
特に主語ですね。日本語って主語があいまいで、「誰が」「何が」がはっきりしないんですよ。逆に英語はこの主語がかなりはっきりしているので、日本語の主語がはっきりしないと訳せないんですね。そりゃ何となく想像して勝手に主語をつけて通訳することもありますけど、結局正しく伝わらないんですよ。
大学入試で4技能がどうのこうの、と言っていますが、本当の国際化のことを考えたら、まずは自分自身が日本語を含めて日本のことをちゃんと知ることですね。大した駐在員ではありませんでしたが、一応は経験者として、僕はこれらが大事だと思いますね。