内申点に関するコラムを読まれた方から、学習塾の先生が学校の先生をやっていいのか、というご質問がありましたので、ここで当スクールの代表である小生(山下)としての考えをお伝えします。
結論から言えば、小生が学習塾の講師(経営者)ということを教育委員会と十分議論したうえで、教育委員会が小生に非常勤講師の辞令を交付しています。
法的な解釈から言いますと学校の教員(地方公務員)が副業として学習塾の講師をすることは地方公務員法第38条により厳しく制限されています。
これに対して、小生の場合は本業が学習塾の講師(経営者)であり、学校の先生(非常勤講師)が副業となります。上記とは逆になります。
学校の講師は正式には「会計年度任用職員」と呼ばれ、常勤講師の「フルタイム」と、非常勤講師の「パートタイム」の2つに分類されます。
小生は非常勤講師ですので「パートタイムの会計年度任用職員」ということになります。
この教員の副業を規制する地方公務員法第38条は、フルタイムの会計年度任用職員には適用されますが、パートタイムについては対象外となっています。
したがって、小生が非常勤講師を行っても法的には問題はありません。
次に倫理的な問題です。どちらかというと、こちらが問題になるのではないかとおもいます。
ご質問を頂いた方が心配されたのは、学習塾の講師が学校の先生をやると、自らの学習塾の生徒に有利に働くのではないか、ということではないかと思います。
ご心配されたことは、まさに小生がこの仕事を引き受けるうえで一番最初に懸念したことでもあり、教育委員会と十分な論議をしたところです。したがって、将聖としてもそうならないように細心の注意を払っています。
まずフルタイム・パートタイムに関係なく、会計年度任用職員は以下の法律が適用されます。
- 服務の根本基準(新地方公務員法第30条)
- 服務の宣誓(新地方公務員法第31条)
- 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(新地方公務員法第32条)
- 信用失墜行為の禁止(新地方公務員法第33条)
- 秘密を守る義務(新地方公務員法第34条)
- 職務に専念する義務(新地方公務員法第35条)
詳しくはそれぞれの法律をご参照いただきたいと思いますが、これだけ多くの規制がかけられていることからもお分かりになるように、学校で知り得た情報は、機密情報として一切外部に流布することができません。テスト内容や範囲や通知表の評価についても、もちろん外部に漏らすことはできません(すでに公開されているものは当然除きます)。
もし漏洩が分かれば、法的に処罰を受けますし、それよりもSNSが発達した昨今では、ネット上で社会的制裁により私どものスクールの存続にも悪影響が及ぶことになる、というのは火を見るより明らかです。
さらに小生が勤務する中学校は、私のスクールに通う生徒がいない中学校をお願いしています(スクールから車で1時間かかる距離にある中学校です)。
これも「我田引水」と捉えられないようにする小生としてのできる限りの配慮によるものです。
では、どうして学習塾の講師が学校の先生をすることになったのか、という経緯です。
コネではないか、と思われたかもしれませんが、小生は身内に公務員は一人もおらず、昔からコネとは縁遠い生活を送っている、ごく普通の市民です。
昨年、小生が学んだ富山県主催の「とやま起業未来塾」のイベントにOBとして出席した際に、たまたま同席されていた県の教育委員会の方とお話をする機会があり、その際に学校の先生方の業務負担の大きさと先生の不足が話題に上り、いろいろとお話を伺うことがありました。
これは新聞等で報道されている通りで、教育委員会としても真剣に考えて真摯に対応しているものの、かなか改善につながらないということを伺い、それでは我々民間が何らかのお手伝いができるのではないか、という話になりました。
ちょうど学校側で非常勤講師が不足していたこともあり、小生が中学・高校の理科の教員免許を持っていることを告げると、では非常勤講師として手伝ってもらうことは可能か、ということになったわけです。
もちろん小生が学習塾の講師かつ経営者であり、そのような人間が学校で講師をすることに対する県民の見方は決して好意的ではないだろう、ということは伝えましたが、小生のスクールがいわゆるテストの点数や進学を目的とする進学塾ではなく「勉強の仕方を学ぶ学習塾」である点と「教育は進学ではなく社会のために施されるべきもの」という学校側に極めて近い理念を評価いただき、逆に「ぜひ勉強の仕方を子供たちに伝えてもらいたい」というお言葉までいただきました。
これがきっかけとなって、学習塾の先生が公立の中学校の先生をするということになったという次第です。
もちろん中学校では私が学習塾の先生ということは一切生徒には伝えておらず、あくまでも一人の学校の先生として子供たちに接しています(子供たちは「ほかの学校の先生とはなにか違うな」という雰囲気を感じ取っているようですが)。
当スクールは、元社会人だった私が、社会人になって一番必要とされる考える力を身に着けさせる教育を施したい、という考えを実現させるために会社を辞めたうえで設立しました。
毎年入社してくる新入社員を見て、年々考える力が弱くなっているのを肌で感じていたからです。
考える力というのは問題の解き方ではありません。社会ではすでに分かっていることに対する解法などは何の役にも立ちません。社会で必要なのは「答えのないものに対する考え方」です。
自ら調べて、まとめたことから「何がわかるか」「それらはどうしてそうなっているのか」「それではどうすればよいのか」という自分なりのプロセスを生み出すのが「考える力」です。
その考える力を数学や英語、国語、社会、理科という教科を通して身に着けるというのが、私の基本的な考えです。
ですから、私の学習塾が学校教育と同じ方向を向いて当然ですし、むしろ強い親和性を持つことになります。
911の同時多発テロが発生した時、私はちょうど駐在員としてアメリカのオハイオ州にいました。
そのテロが発生した時のアメリカ人の行動は今も鮮烈に焼き付いています。
「国民は国家のために何ができるか」
アメリカ人が持つこの考え方こそが、アメリカという国の国力の根底にあります。
その考えに基づき行動する毅然と行動するアメリカ人を間近で見て、この考え方は小生の社会人としての考え方のベースとなりました。
私が国に対してできるのは、教育という点から国力を支えるということです。
そのためには私どものスクールは教育塾でなくてはならず、進学塾であってはならないのです。
日本には「三方よし」という優れた商観念が存在します。その中の「世間よし」というのは、まさに私が求めているものに当てはまります。
海外を含めて産業界を長年経験した人間だからこそ、子供たちに教えられることは多いと思います。
どうか、学校現場で先生として教壇に立っている学習塾の講師はこのような考えを持って子供たちの教育に携わっている、ということを知ってもらいたく思います。