今、中学校と小学校では、タブレットの導入に向けての工事が行われています。
おそらく新学年からタブレットが順次授業に導入されることになると思います。
ここで気になる情報があります。
経済協力開発機構(OECD)が国際学力調査(PISA)の結果を元にして2015年に発表した報告書によると、タブレットを含めた教育現場への過度のデジタル機材(ICT)の導入は、かえって学力の低下を招く、ということです。
http://www.oecd.org/publications/students-computers-and-learning-9789264239555-en.htm
先日、このことを中学校の先生方に説明したところ、「どうしてタブレットを導入すると学力が下がるんですか?」と、質問を受けました。
学研CAIスクール富山本部北校は開校した11年前からICTを導入した学習を提供している、ICTを活用した学習塾の中では県内でも最も古い学習塾の一つです。
ICTを導入した学習のメリット・デメリットは、もう10年前に解明しています。もちろん過度なICTの導入が学力低下につながることも十分理解していますし、その理由も分かっていますし、対策も10年前に構築しています。
ICTの導入による学力の低下も十分予想していました。これをOECDが証明したということになります。
質問をされた先生には「簡単です。子供たちが辞書もノートも使わなくなるからです。」と説明しました。
タブレットは便利です。
単語や言葉の意味、漢字はすぐに調べられますし、説明は映像やアニメで分かりやすく説明してくれます。
しかしここからが問題です。「分かりやすい」ということと「正しく理解していること」は必ずしも結びつくとは限りません。
タブレットの導入は、かえって「わかったつもり」で終わってしまうことにつながりやすいのです。
よく「塾では分かったけど、テストになったら解けなかった」という話を聞きます。これは「わかったつもり」の代表的な話です。
分かったことを、自分自身が正しく理解するためにするべきことを正しくしていないと、残念ながらすぐに忘れてしまいます。人間の脳は簡単にものを覚えられるようにはできていません。習ったことを身に着けるためには、正しい方法で正しく学習することが必要です。
いくらICTが発達しようが、人間の脳は少なくともここ千年はほとんど進化していません。物事を正しく理解するためには、どれだけICTが発達しようが、人間の脳が理解しやすい方法で勉強する必要があります。
実はノートと鉛筆を使った勉強というのは、長い年月の中で研ぎ澄まされた、人間の脳が最も理解しやすい最高の勉強方法です。
AIもタブレットは素晴らしい道具ですが、あくまでも道具です。道具はあくまでも手段であり、道具を使うことが目的になってはいけないのです。
中学校の先生も「目からウロコでした」と十分納得されたようです。
ICTだけを活用した学習指導は、かえって成績を下げるということは、ぜひ皆さま方にも知ってもらいたいと思います。