もともと学校の先生か
博物館の学芸員になりたくて
教員免許も学芸員資格も
取ったのですが、
当時趣味だったオートバイが縁で
自動車関連の仕事についたんです。
3年くらい働いてから
教員になろう、と思っていたんですが
入社した会社がいろんなことを
経験させてくれたこともあって
辞めるに辞められず
結局20年その会社で
働いていました。
もともとは化学を専攻していましたが
気がついたらガチのエンジニアに
なっていましたね。
それも化学とはほとんど縁のない
車のエンジンのエンジニア。
研究開発だけでなくて
製造現場の生産性を上げる仕事や
品質管理や品質保証、
さらにはアメリカ駐在もしていたので
ものすごく視野は広がりましたね。
英語なんて高校時代全国で
下から数えた方が早いくらいの
酷い成績だったんですが
アメリカに駐在していたときは
当たり前に通訳とか翻訳とかを
していましたから
何がどうなるか分からないものです。
変わったところでは
ホンダの研究所で
ハイブリッドカーのエンジンと
スポーツカーのエンジンの
開発に参画したことですかね。
片方はメチャメチャ燃費重視で
もう片方はメチャメチャ
パワー重視で
両極端なエンジンの開発を
同時にやっていたんです。
それも東大卒とか東工大卒が
ゴロゴロいる中で。
世界の最先端って
ヤッパすごいな、と思いながら
仕事をしていました。
そのうち、新入社員の教育係も
やることになったんですが、
違和感を覚えたのが
その頃ですね。
まず自分で考える力が
おしなべて弱いんです。
言われたことは
卒なくこなすんですがね。
自分たちで調べることも苦手だし
まとめることも苦手。
ですから議事録もちゃんと取れないし、
やろうとすることが
浅いレベルで終始するんです。
単なる世代の違いというだけでは
ないだろう、とは感じましたね。
これはエンジニアの感なんですが。
必ずそうなる理由があるんです。
それがよく分からないまま
時間が過ぎていったのですが
この傾向がどんどん悪くなって
どんどん考える力が
低下しているな、
と感じていたときに
教育現場を見る機会が
あったんですね。
やっぱりエンジニアなんですね。
「現場・現物・現実・原理・原則」
の「5ゲン主義」で鍛えられているので
現場を見た瞬間に分かりました。
そりゃそうなるわな、です。
と同時に、背筋が寒くなる感覚を
覚えましたよ。
これでは日本に未来はないな、と
素直に感じました。
点数とか進学ばかりではダメで
考える力をつける教育を
しないといけない、と
本気で思ったんです。
昔学校の先生になろうと
思った気持ちが再燃したのも
このタイミングです。
けど、教員になって
学校教育を変えることは
限りなく不可能ということも
分かっていました。
だけど何かをしないといけない。
このままだと
考える力を持てない子どもたちが
ドンドン社会に出てしまうわけです。
それだったら教員ではなく
学習塾の方が早いのではないか、と
考えたんです。
ところがどの学習塾を見ても
どこも点数や進学のことばかりで
教育とはほど遠いところばかり。
それだったら自分でやろう、と
一念発起して、このスクールを
立ち上げたんです。
周りは言いましたよ。
そんな塾なんて
うまくいくはずがないって。
そんなのやってみないと
分からないじゃないですか。
それから13年経ちました。
まだやっています。
それどころか、開校して
2年目で生徒数が100人を
超えましたから。
これはいまだに学研CAIスクールの
記録で破られていないんです。
一つのスクールに9の中学校の
生徒が通うというのも
いまだに破られていません。
定期テスト対策は
とんでもなく大変ですけど。
もちろん教育理念は
全く変えていません。
教育は進学や点数のためではなく
社会のために施すもの。
そのうち教育委員会から
公立中学校の講師の依頼も
来るようになりました。
ですから学校の先生になる
という夢は叶っちゃったんです。
学研CAIスクールの本部からも
本部の仕事を依頼されるように
なりました。
今は学研が開発した
AIを活用した学習システムの
改善プロジェクトに
参画しています。
この改善が完成したら
ものすごいものが
できるということは
もう分かっているので
やっていて楽しいですね。
エンジニアの経験が
そのまま活かせますし。
自分でも面白いなと思うのは、
点数とか進学を目的にしなくても
ドンドン子どもたちの
点数が上がって、
行きたい高校にドンドン
進学しちゃう、ということです。
でもこれって当たり前なんですね。
テストって理解度を図るものですから
ちゃんと理解していたら
点数って必ず上がるんです。
考える力がついたら、
理解は深まりますから。
自分でも変な塾だと思いますよ。
学習塾の常識を
ことごとく壊している塾ですから。
けど思うんです。
こんな塾が日本に一つくらい
あってもいいんじゃないか、って。
社会で活躍できる子どもたちを
一人でも多く輩出できれば
それでいいんですよ。
次の日本を作るのって
僕たちでなく
子どもたちなのでね。